Walking barefoot decreases loading on the lower extremity joints in knee osteoarthritis.
Shakoor N, Block JA.
Arthritis Rheum. 2006 Sep;54(9):2923-7.
DOI: 10.1002/art.22123
abst
To evaluate the effects that modern shoes have on gait and lower extremity joint loads in osteoarthritis (OA). Gait analyses were performed on 75 subjects with knee OA while they were wearing their everyday walking shoes and while they were walking barefoot. The trials involved optoelectronic detection of external markers during ambulation over a multicomponent force plate, and were matched for speed. Comparisons were made of gait parameters and joint loading during trials in which the subjects walked while wearing shoes and while barefoot. Peak joint loads at the hips and knees significantly decreased during barefoot walking, with an 11.9% reduction noted in the knee adduction moment. Stride, cadence, and range of motion at the lower extremity joints also changed significantly, but these changes could not explain the reduction in the peak joint loads. Shoes may detrimentally increase loads on the lower extremity joints. Once factors responsible for the differences in loads between with-shoe and barefoot walking are better delineated, modern shoes and walking practices may need to be reevaluated with regard to their effects on the prevalence and progression of OA in our society. 現代の靴が変形性関節症(OA)の歩行および下肢の関節負荷に及ぼす影響を評価する。歩行分析は、日常生活のウォーキングシューズを履いているときと裸足で歩いているときの膝OAの75人の被験者に対して行われました。試験は、多成分フォースプレート上での歩行中に外部マーカーのオプトエレクトロニック検出を含み、速度が一致していました。被験者が靴を履きながら裸足で歩いた試験中の歩行パラメータと関節負荷の比較が行われました。腰と膝のピーク関節負荷は裸足歩行中に大幅に減少し、膝内転モーメントで11.9%の減少が見られました。下肢関節のストライド、ケイデンス、および可動域も大幅に変化しましたが、これらの変化はピーク関節負荷の減少を説明できませんでした。靴は下肢の関節にかかる負荷を増加させる可能性があります。靴を履いたままの歩行と裸足の歩行の負荷の違いの原因となる要因が明確になったら、現代の靴と歩行の慣行を、社会におけるOAの普及と進行への影響に関して再評価する必要があるかもしれません。 背景
変形性関節症(以下、OA)は生体力学的な異常により発症する場合が多い。特に膝OAでは、異常な関節負担が症状の発生や進行のリスクになることが報告されており、歩行中の膝関節負担を軽減する戦略に関心が集まっている。 膝の負担を示す一般的な指標として、外部膝関節内転モーメントが挙げられ、これは膝関節内側面の関節負担の大きさを反映する膝関節内反トルクと同義である。内転モーメントのピーク値は画像診断による症状の進行度や疼痛の強度と相関が見られる。また、これらの膝関節内側面の負担軽減を目的とした外側ウェッジなどの介入が行われ、補助手段としての有効性が報告されている。靴インサートにより各歩行要素や膝関節負担が変化するが、靴自体もOA者の膝関節負担に影響を及ぼす可能性が考えられる。 目的
そこで、本研究では靴が内側型膝OA者の各歩行要素および膝関節負担に与える影響について調査することを目的とした。
対象
86名の内側型膝OA者を対象とした(うち除外対象は11名)。全ての被験者は両側性の膝OAであり、(対象肢は)K/Lグレード2あるいは3であった。対側の膝はK/Lグレード1~3であった。主な除外基準は、15度以上の膝関節屈曲拘縮、足および股関節のOA、足部障害、BMI35以上であった。
方法
歩行計測は靴着用条件および裸足条件にて実施した。下肢にマーカーを貼付し(設置箇所は、腸骨陵、大転子、膝関節外側、外踝、踵骨、第5中足骨頭)、複数台のカメラおよび床反力計を用い三次元動作解析を実施した。歩行中に発生する外部モーメントを抽出した。なお、外部モーメントは体重と身長により正規化した。抽出項目は歩行要素(歩行速度、ストライド、ケイデンス、膝、股、足関節の運動範囲、足角)および関節モーメント(膝関節:外転、内転、屈曲、伸展モーメント、股関節:内転、外転、屈曲、伸展、内旋、外旋モーメント)とした。
全ての被験者に自身が所有する快適な靴(文中ではwalking shoes)を着用するよう指示した。また、歩行速度は通常の歩行速度とし、靴着用中の歩行速度と裸足時の歩行速度を一致させた。各条件下でのモーメントおよび歩行要素の比較には対応のあるt検定を用いた。また、各歩行要素および関節モーメントの関連性について線形回帰分析を用い検証した。
結果
両条件間における歩行速度に変化は見られなかったが、裸足歩行時にストライド長は減少し、ケイデンスは増加した。また、主要関節の関節運動範囲および足角は裸足歩行時において減少した。 次に、裸足歩行時における膝関節内転モーメントおよび伸展モーメントのピーク値は減少し、膝関節内転モーメントは11.9%の減少を示した。同様に、股関節内転モーメント(4.3%)、内旋モーメント(11.1%)、外旋モーメント(10.2%)も減少した。また、裸足歩行時における膝関節および股関節負担の減少と各歩行要素(ケイデンス、ストライド、足角、下肢関節の運動範囲)の間に関連性は認められなかった。
考察
本研究により裸足歩行時における膝関節および股関節負担の軽減が認められた。また、歩行要素の変化では関節負担の軽減の理由について説明しえないことが確認された。すなわち、靴のデザイン自体が下肢関節の過度な負担を生じる可能性が示唆された。
OAの発症および進行と靴の関係についての詳細な検討された研究は限られるが、足部の些細な変化が膝関節負担に影響を及ぼすことが知られている。代表例として、膝OAに対する外側ウェッジ処方により膝関節トルクが5~7%減少することが知られている。本研究では、裸足で歩行するだけで膝関節(約12%)および股関節(4~11%)の負担の軽減が認められ、外側ウェッジを用いた先行研究より大きな影響を認めた。
どのような要因や生体力学的な変化が裸足歩行時における関節負担の減少を引き起こすのか検討の余地がある。先行研究によると、ヒールが高い靴では膝関節モーメントが増大し、逆に踵の無い靴では膝関節モーメントが減少することが報告されている。また、その他の要因として靴底の剛性の影響が挙げられる。先行研究によると、硬い靴底条件では股関節負担に不都合な影響を及ぼす可能性が報告されている。したがって、柔軟な足部の運動が可能な裸足時と比較し、靴着用条件ではソール部分の剛性が関節負担に影響を及ぼした可能性が考えられる。
最後に、裸足歩行時における力学的有利性として、地面と足の間に介在物のある条件(靴着用条件)と比較し、裸足歩行時では皮膚の接触による感覚入力が増加する可能性が示唆される。上述した様々な可能性については今後継続的な検証が必要である。
本研究により、靴条件と裸足条件では関節負担が異なることが明らかになったため、OA発症とOA進行の観点から靴と歩行の関係性について再評価する必要があるかもしれない。
【解説】
解説1:
靴および裸足歩行が各歩行要素や関節モーメントに与える影響について検討した論文である。裸足歩行時における膝関節内転モーメントの減少が確認されており、内側型膝OA者に対する保存療法を考える上で、また靴や装具などの介入を再考する上で非常に興味深い。本研究では被験者が自ら選択した常用している靴を靴条件として採用しているため、靴のフィッティングや着用期間、靴の形状や靴の消耗具合などにばらつきがあるものと考えられる。そのため、靴の条件を統一した際の情報について知りたいところである。
解説2:
本研究では裸足歩行の有効性が示されているが、靴を使用しない生活は考えられないため、現実的には膝OA者にとって相応しい履物について再考する必要がある。文中では、ヒールの高さおよび靴底の剛性が膝関節負担に影響を及ぼすことが述べられているが、トゥスプリング(靴の爪先上り)、やトゥブレイク(靴の曲がりの位置や角度)、ヒールの緩衝作用、ロッカーファンクションに対するアッパーの影響などその他の靴の構造についても検討を進める必要がある。また、理学療法士は靴の構造以外にも履物の適合と適応、課題や目的動作に合わせた履物の選択など、靴とヒトのつながりについて関心を持ち、対象者の指導にあたる必要がある。
解説3:
先行研究ではMBTなどのロッカーソールを採用した履物やソール部の屈曲性が高い履物、外側ウェッジのある履物、足底部に緩衝機能を持つ履物では、いずれも膝関節内側面の負担が減少することが報告されている。踵部の丸さや足底面の傾き、靴底部の屈曲性、ソール部の軟らかさ(動的なソール形状の変化)はいずれも、足部のロッカーファンクションや床反力ベクトルに影響を及ぼすことが示唆され、これらの変化が膝関節内側面に対する負担に影響を及ぼすものと考えられる。また、足底部に緩衝機能を持つ履物では歩行機能および疼痛の改善が認められており、その他の履物の効果についても多角的に検討していく必要がある。
データはピーク値のみの分析。波形データが提示されていないため、タイミングの変化は不明。junkaneko.icon
"近代的な靴のデザインは、このような患者の下肢に過度の負荷を与える本質的な要因となる可能性を示唆している。"ここ大事!junkaneko.icon